神田敏晶さん 2010年4月13日 on Twitter

ツイッターには、人々の関心や欲望、煩悩、リアクション、対話、すべてのマーケティングに必要な断片的な情報が24時間流れている。それを「ツイート・ストリーム(つぶやきの潮流)」と呼ぶ。

ツイッターは、オデオ社で、ビジネスツールとして開発されたものが、仕事以外にも使うことによって、大きな情報のうねりを形成することをツイッター社自らが体験したのであった。

ツイッターは、その前進となるオデオという会社で、業務進捗管理を円滑にするために、開発された社内向けのツールであったのだ

ネットの発達したシリコンバレープログラマーの仕事は、昼夜が逆さまになることも多々あり、全員が一度に揃って会議するには至難の技であった。そして、さらに会議の始まりの言葉は、毎回、「今、何をやっているの?」だった。その進捗報告だけでも相当な時間を要することが多々あった。

当然、個人のモチベーションは会社の仕事だけではなく、私生活にも及んだ。「今何をやっているの?」という140文字のコミュニケーションは、本業よりも、オデオの社員を夢中にさせ、仕事からプライベート、オンとオフの情報すべてが会社で共有された。

つまり、ツイッターは、ビジネスツールとして開発されたものが、仕事以外にも使うことによって、大きな情報のうねりを形成することをツイッター社自らが体験したのであった。

しかし、現在のツイッター成功事例はあくまでも、インターネットの初期の成功と同じで決して本筋ではない。 次のステージを考えると、ツイッターは、ほぼ企業の全員が電子メールアドレスと同じようにアカウントを持っている全社員時代がやがてやってくるからだ。

その時に、全員が、製品やサービスの売り込みをやったとしたら、誰もそんなアカウントをフォロー(登録)したりはしない。むしろ、必要のなのは、企業で働く個人の個性が重要となってくるのである。

組織として、「個」を殺して働いていた日本人にとっては、はじめて、個の重要性を組織に繁栄させる時代がやってきたのである。これは定着するのか、崩壊するのか、まさに試金石である。しかし、インターネットはそもそも、すべてをフラットにし、組織のヒエラルキーを変えてきた。

そんな時代のツイッターのビジネス活用は、即、売上につながらないけれども、もっと重要なブランドや企業文化を伝達・伝承するためのツールであると考えられないだろうか?

企業が顧客に対して、販売促進の「ツイート」をするのではなく、企業に務める一個人が、ご近所づき合いの感覚の中で、対話しながら、あそこの会社はいい会社で、いい人が働いているという、ことをじっくり醸成していくタイプのメディアだ。

従来のように、広告宣伝費をかけて、枠を買えば何%の売上があがるといった時代ではない。むしろ、長い時間をかけて、会社のファンを育成していかなくてはならない時代なのだ。 そのための、無料で無限に使えるツールがツイッターなのだ。

ツイッターがビジネスを変えるのではなく、企業がいい会社であれば、それは勝手にいいウワサとして、社員からも社会からもツイートされる。

つまり、「社会=ツイッターが見ている、いい会社をめざす!」ということが、一番ツイッターのビジネス活用法につながる。

小手先技でフォロワー(ファン)を増やそうともせず、日々の仕事の中での社員の行動やつぶやきを、社内だけでなく、社外からも評価されるようなオープンな思想の経営が求められるような時代になりつつある。 それが、ソーシャルメディア時代の経営であり、事業である。